
敵陣のほぼ中央で京都サンガF.C.がボールを奪い、カウンターを発動させたとき、ゲームキャプテンの福田は右タッチライン際に、しかもハーフウェイラインよりも後方の自陣にいた。
5分が表示された後半アディショナルタイムがすでに5分台に入っていた状況で、10秒後にはFC町田ゼルビアのペナルティーエリアのすぐ外側まで攻め上がり、迷わずに利き足とは逆の左足を一閃。強烈な一撃をゴールの右隅に突き刺し、勢いあまってペナルティーエリア内へ入り込みながら右拳を振りあげた。
歓喜の瞬間、実に6人もの京都の選手が町田のペナルティーエリア内にいた。途中出場のMF奥川雅也、MF川﨑颯太、FW長沢駿、FW平賀大空の4人に、サイドバックで先発し、3バックに移行した後半36分以降はウイングバックとして上下動を繰り返していた左の須貝英大、そして右の福田だ。
しかも、町田戦の総走行距離で須貝はチーム1位の12.037kmを、福田は2位の11.526kmをマーク。スプリント回数でも24回の須貝と23回の福田が、他のチームメイトたちを大きく引き離す形で1、2位に名を連ねていた。疲労困憊のはずなのに、なぜ試合終了間際に怒濤の攻め上がりを演じられたのか。
「チャンスだと思ったので、あの場面では思い切って上がってきました」
今シーズンのリーグ戦において、出場9試合目で決めた初ゴール。ヒーローの福田は「正直、ちょっと泣きそうになりました」と胸中を明かしながら、連敗を2で止めた土壇場での波状攻撃を振り返った。
「あの時間帯にあれだけの人数がボックスのなかへ入っていけるのが、今年のサンガの強みだと思っています。交代で出た選手たちを含めて、みんながチームに勢いをもたらしてくれました。今シーズンは後半での得点がけっこう多いのは、走力というところで他のどのチームにも負けていないからだと思うし、そこには自信をもってやれたので、僕じゃなくても誰かしらがゴールできていたんじゃないかなと思っています」
福田のゴールをさかのぼれば、京都のロングボールの落下点に入った町田のDF岡村大八が、頭で弾き返さずに胸でのトラップを選択したプレーに行き着く。ボールが大きくなったミスにすかさず奥川が突っかけ、後半28分にこちらも今シーズン初ゴールとなる同点弾を決めていた20歳の平賀がこぼれ球を拾った。
平賀は森保ジャパンへの招集歴のあるDF望月ヘンリー海輝の股を射抜くパスを選択。ボールを受けた須貝が乾坤一擲のカウンターを発動させ、ドリブルで中央へ切り込みながらペナルティーエリア内へ侵入。ゴール正面で右足を振り抜くも、必死にブロックへ飛び込んできた岡村に弾き返された。
Jリーグが公式ホームページで毎節ごとに更新・発表している個人とチームのスタッツで、京都は1試合の平均スプリント回数154でトップに立つ。そして、町田戦まで全試合に出場している須貝が、総スプリント回数368でこちらもトップ。必然に導かれた波状攻撃は、これだけでは終わらなかった。
二の矢となる川﨑が真っ先にこぼれ球を拾い、スピードに乗ってペナルティーエリア内へ侵入。右斜め前にフリーでいた奥川へパスを出すも、町田のキャプテン、DF昌子源にスライディングで再び弾き返された。そこへ三の矢として飛び込んできた福田は、目の前に誰もいない状況にこんな思いを抱いていた。
「自分の目の前にボールがこぼれてきたら、思い切ってシュートを打とうと決めていました」
しかし、利き足の右足を振り抜くにはステップが合わない。少しでもスピードを落として右足を合わせていたら、死角の位置となる右側からスライディングで防ぎにきた、町田のMF前寛之におそらくブロックされていた。左足で放ったシュートに対して、福田は試合後にこう語っている。
「シュートに関しては、僕は右でも左でも遜色なく打てるというか、逆に左だったからこそリラックスして打てたと思う。あのレンジからのミドルシュートは自分でも得意にしているし、何よりもあの瞬間はいい意味での無だったというか、しっかりと左足を振り抜きながらゴールの枠に入れる、ということだけを意識していたので」
福田のゴールをさかのぼれば、京都のロングボールの落下点に入った町田のDF岡村大八が、頭で弾き返さずに胸でのトラップを選択したプレーに行き着く。ボールが大きくなったミスにすかさず奥川が突っかけ、後半28分にこちらも今シーズン初ゴールとなる同点弾を決めていた20歳の平賀がこぼれ球を拾った。
平賀は森保ジャパンへの招集歴のあるDF望月ヘンリー海輝の股を射抜くパスを選択。ボールを受けた須貝が乾坤一擲のカウンターを発動させ、ドリブルで中央へ切り込みながらペナルティーエリア内へ侵入。ゴール正面で右足を振り抜くも、必死にブロックへ飛び込んできた岡村に弾き返された。
Jリーグが公式ホームページで毎節ごとに更新・発表している個人とチームのスタッツで、京都は1試合の平均スプリント回数154でトップに立つ。そして、町田戦まで全試合に出場している須貝が、総スプリント回数368でこちらもトップ。必然に導かれた波状攻撃は、これだけでは終わらなかった。
二の矢となる川﨑が真っ先にこぼれ球を拾い、スピードに乗ってペナルティーエリア内へ侵入。右斜め前にフリーでいた奥川へパスを出すも、町田のキャプテン、DF昌子源にスライディングで再び弾き返された。そこへ三の矢として飛び込んできた福田は、目の前に誰もいない状況にこんな思いを抱いていた。
「自分の目の前にボールがこぼれてきたら、思い切ってシュートを打とうと決めていました」
しかし、利き足の右足を振り抜くにはステップが合わない。少しでもスピードを落として右足を合わせていたら、死角の位置となる右側からスライディングで防ぎにきた、町田のMF前寛之におそらくブロックされていた。左足で放ったシュートに対して、福田は試合後にこう語っている。
「シュートに関しては、僕は右でも左でも遜色なく打てるというか、逆に左だったからこそリラックスして打てたと思う。あのレンジからのミドルシュートは自分でも得意にしているし、何よりもあの瞬間はいい意味での無だったというか、しっかりと左足を振り抜きながらゴールの枠に入れる、ということだけを意識していたので」
町田戦当日の朝に、曺貴裁監督から「ゲームキャプテンを任せる」と告げられた。キャプテンの川﨑、副キャプテンのDF鈴木義宜がベンチスタートで、同じく副キャプテンのGKク・ソンユンとFWラファエル・エリアスがベンチ外になった状況で、もう一人の副キャプテン、福田に大役が託された。明治大学から加入して3シーズン目。初めて左腕に腕章を巻く福田は、キックオフまでに決意を固めた。
「チームを引っ張っていく部分で、チームを鼓舞して、というよりも自分のプレーでみんなを引っ張っていこうと。僕が最も勝ちに貪欲だと思っているし、そういった熱量をチームに伝えていけばおのずとよくなっていって、結果として僕自身もいいプレーができると思っていた。そこに関しては、うまくできたと思います」
なぜ最も勝ちに貪欲なのか。答えは怪我で出遅れた今シーズンの序盤戦にある。昨シーズンはリーグ戦で34試合に出場。プレー時間はFW原大智の3212分に次ぐ2位の2850分をマークし、742回を数えた総スプリント回数で堂々のリーグ1位に輝いた福田の今シーズン初出場は、4月2日の柏レイソル戦だった。
しかも柏戦に続いて同19日のアルビレックス新潟戦でも、ともに先発しながらハーフタイムにベンチへ下げられた。途中出場も5試合を数えるなど、思うように試合に絡めない状況で、京都は第11節、そして第12節にわたってクラブ史上で初めて首位に立った。当時の心境を福田はこう振り返る。
「外から見ていて、自分がいなくてもチームがうまくいっているギャップにもどかしさがあった。でも、僕のサッカー人生を振り返れば、簡単にレギュラーを取って、というより、たくさんの壁を乗り越えていく過程で、気がつけばそういう立ち位置にいた、という形だった。乗り越えなきゃいけない壁がまた来たと思い、毎日毎日を必死にやっていたのがいま形になり、ようやくチームに貢献できた、というのが正直な思いです」
後半開始とともにキャプテンの川﨑が投入された。しかし、ゲームキャプテンは引き続き福田が務めた。
「途中からキャプテンが出てきても、そのままいくのがサンガの伝統なので、最後まで巻かせてもらいました」
ちょっぴり恐縮しながら、左腕に腕章を巻き続けた理由を福田が明かした。キックオフまでに自分なりに高め、腕章に込めた覚悟と決意を、後半に入っても体現できた。疲れ知らずの波状攻撃、利き足とは逆の左足で決めた決勝ゴール、そして赤いキャプテンマークはすべて連動していた。曺監督も福田へ目を細めた。
「怪我で出遅れ、試合に出ても彼らしいプレーがなかなか見られなくても、それでも彼は反発力をもっている。あのタイミング、あの時間帯、そして左足の振りでゴールマウスにもってこられるサイドバックは日本でそんなにいない。その意味でも彼がひとつ結果を出してくれたのは、チームにとっても明るい材料になる」
劇的な勝利で3位に浮上した京都は、リーグ2位の23を数える総得点のうち7割近い16を後半に、さらに6を同30分以降にもぎ取っている。5シーズン目の曺監督のもと、鍛え抜かれたフィジカルが他チームを凌駕する圧倒的な走力を生み出し、後半と接戦にめっぽう強いチームへと変貌を遂げさせた。福田が再び胸を張る。
「これがサンガだと思うし、リーグ戦優勝を含めて、このサッカーでどんどん上へいきたい」
8ゴールで得点ランキング2位のエリアスを欠き、前節までの3試合で2ゴールをあげた原も前半途中で負傷交代した。それでもピッチに立った全員が最後の最後まであきらめず、実に7度目を数える1点差での勝利をもぎ取った京都に、昨シーズンのスプリント王が心身をさらにたくましく成長させて帰ってきた。
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