日本代表は過去最速でワールドカップ(W杯)出場を決めた。2022年カタールW杯後、2024年にカタールで開催されたアジアカップを除くと敗戦を喫したのは第2次森保ジャパン発足後第2戦のコロンビア戦のみ。W杯アジア2次予選は6戦6勝24得点0失点、最終予選は8戦を終えて6勝2分24得点2失点と抜群の成績を収めている。今回は山本昌邦ナショナルチームダイレクター(ND)に、なぜ日本がここまで好成績を続けられるようになったのか。その裏側を聞いた。(取材・文=森 雅史/全4回の1回目)
   ◇   ◇   ◇   
――山本昌邦NDが就任してすぐに取り組んだのが分析班(テクニカルスタッフ)の増員でした。W杯の時は4人。W杯後は一度2人に減らしましたが、すぐに4人に戻しています。
「4人は必要だと思います。僕がこの立場になって初めての、2023年3月の合宿ですぐ『2人では足りない』と思いました。例えばテクニカルスタッフはSAMURAI BLUEのトレーニングを撮影し、その映像をすぐに加工しなければなりません。コーチングスタッフが夕方、そして次の日の午前中にはミーティングをするので、それまでに用意するんです。攻撃、守備、セットプレーの攻撃と守備をしっかり凝縮しています。そして名波浩、齊藤俊秀、前田遼一、下田崇というそれぞれのコーチが担当しているシチュエーションに分けなければいけない。
 そして何より大切なのは、監督やコーチよりも選手に分かりやすくなければいけないということです。だから撮った映像からポイントを絞って加工し、テレビ局並みのアングルの変え方なども使って映像を仕上げています。いろんな角度の映像やクローズアップなども交えながら分かりやすくしているんです。距離感やタイミングなど細かい話を伝えているので、そこを選手に伝えるための映像を作るための作業量はものすごく多いんですよ。  しかもSAMURAI BLUEのことだけではなくて、相手の分析も進めなければいけません。2人体制だったら、最大限頑張ればギリギリ最低限のことはできたと思います。指導者の勉強で使うようなマニュアルに掲載されていることだったらできるでしょう。でも我々はトップを目指しています。だからこれ以上はやらなくてもいいだろうというぐらいのことを、余力を持ってこなさなければいけない。そこで4人必要だということになりました」
――スタッフの陣容や作業などもW杯本大会に向けて整えてきたのですね。
「W杯本大会を考えても必要だったと思います。スタッフのコンディションが良くなければ仕事の質は落ちていくんです。スタッフがフラフラで仕事していてはクリエイティブな仕事はできませんよね。SAMURAI BLUEで、選手はコーチやスタッフがサポートします。だから僕の仕事はスタッフを守ることだと思っています。優秀なコーチ、スタッフを集めていますので、彼らがいいコンディションでいてくれれば、いい仕事をすると思います。スタッフを常に100%以上のコンディションで仕事してもらえるように、力を発揮してもらえるようにするのが、僕の気を配る最大のポイントだと思っているんです」
――今回予選でも、その分析班の活躍があったから日本代表は最速で本大会出場を決められたと感じていますか?
「そのとおりです。ただ勝ってはきましたが、いろいろなことが起きて山あり谷ありでした。それでも勝てたのは監督が続投したことの強みが出たからだと思います。経験のある監督が長くやって、これまでの反省も踏まえて安定しました。選手個々とのコミュニケーションや信頼関係がしっかりあると思いますし、そこが継続してきた強みとしてあると思います」
――今後この分析班の体制はどのように変わりますか?
「今までは予選で月2試合ずつでしたが、今後はW杯のグループリーグから決勝までの8試合を睨んで準備することになります。2026年の北中米W杯は、アメリカ・カナダ・メキシコと試合会場が広範囲で、気温も違いますし時差もあります。どこにキャンプ地を構えるかなど抽選次第になる部分はありますが、抽選を待っていたら準備が進みません。ですから、今のうちからできることを進めています。
 分析以外では、たとえばホテルの選考。選手たちは自分たちのルーティンがあって、練習がない午前中にジムを使う選手がいるとすると、ホテルにちゃんとその設備があるところにしなければなりません。また、そういう器具をどうやって用意するか、どう移動させるかなどもシミュレーションします。FIFA(国際サッカー連盟)はグループリーグの間は同じ時間帯の中での移動を考えていると言っていますが、勝ち上がった時のことまで精査しなければなりません」
――2024年カタール・アジアカップではW杯本大会を想定して分析班を8人に増やしていましたが、同じような人数になるのでしょうか。
「まだ人数は決まっていません。どれくらいの人数が必要なのか、また実際に現地に行く人間はどれくらいなのかを考えなければいけません。今はリモートでいろいろなことができるので、もしかしたら日本にいるほうが処理だけを考えると環境がいいかもしれないんです。
 だからチームと一緒にいるテクニカルスタッフが何人で、相手の分析のために先乗りするスタッフが何人ということを精査して、決めていきます。ただ分析のスタッフ全体を増やしていく方向では考えています。また、その時だけいろいろなチームから借りてくるという考え方もあるのですが、同じグループとして目標を共有することや、未来のことを考えると若い人材を育てることも考えなければいけないと思っています」


※海外サッカーのランキングをチェック♪

掲載元:FOOTBALL ZONE/フットボールゾーンFOOTBALL ZONE/フットボールゾーン
URL:https://www.football-zone.net/archives/590560