ピッチ上でプレーしている姿からは、緊張している様子は、ほとんど伝わってこなかった。しかし、12日に行われたカタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の第4節、オーストラリア戦の試合後、先発に抜擢されて、先制ゴールまで決める活躍を見せたMF田中碧は「この舞台で、緊張がないわけないですよね」と笑いながら口を尖らせた。
 試合前、日本は3節を消化した段階で1勝2敗。グループ首位のオーストラリア、2位のサウジアラビアに勝ち点差「6」を付けられ、背水の陣の状態だった。この試合の結果次第では、森保一監督の進退問題に発展する可能性が高かったばかりか、W杯の出場も危うくなるという大一番。しかも田中は、ここまでW杯最終予選で先発はおろか、途中出場もしたことがない状況だった。
 それでも外からは落ち着いているように見えたのは、田中自身が腹をくくっていたからだ。
「正直、僕の人生の中で、これ以上に緊張することはないだろうなというくらい責任もそうですし、日本サッカーも進退が懸かった試合ではあったので。この試合が終わって『引退してもいいや』というくらい、後悔のないゲームをしたいと思っていた。その意味では自信を持ってプレーしていました」
 もし田中のメンタルが緊張に支配されていたら、前半8分の先制ゴールはなかっただろう。左サイドからボールを運んだMF南野拓実の折り返しが、自分のもとに届くと予感していたという田中は、落ち着いてボールをコントロールし、この試合でも好セーブを連発したGKマシュー・ライアンの届かないゴール隅のコースへ蹴り込んだ。緊張を抑え込んだプロセスを、田中はこう振り返る。
「本当に日本サッカーにとって大一番の試合で、自分は初招集で、ほかにもピッチに立てていない選手もいるなかで初先発。自分より素晴らしい選手がたくさんいるなかで、本当に限られた選手しか立てない舞台に立たせてもらった。今までも、これからも、これ以上の舞台はないと思ったので、緊張はしました。ただ、やることは変わらない。結果論、勝ってよかったですが、正直、悪くても良くても、自分の力を出すこと。ダメならダメで仕方がない。それくらいの覚悟を持ってやった。そのなかで全力を出せたと思う」


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