伝統。
 それはひとつの流れを意味する「統」が、次の世代に「伝わる」ことで成立する。流れが断ち切られてしまうなら、すなわち「伝統」ではなくなる。
 超がつくほどの堅守で鳴らした横浜F・マリノスは、アンジェ・ポステコグルー監督のもとで、超がつくほどの攻撃型に大転換した。ハイラインを敷き、前に人数を掛けて分厚く攻め立てる。
 サイドバックが最終的にフリーになってシュートを放つのは実に痛快だ。点を奪われたら逆に上回ればいいという発想もまた実に明快だ。
 昨年はその端境期に揺れたが、今年は揺れていない。
 お隣のベイスターズのマシンガン打線を彷彿とさせるイケイケドンドンのマシンガンサッカー。霞んでいく堅守の伝統より膨らんでいく攻撃の機軸は、喪失感を期待感が打ち消していくようでもある。
中澤、中町が去っても伝統は消えず。 中澤佑二が引退して、中町公祐も去った。
 しかし霞んでいても、消えやしない。というよりも要所要所に、伝統の息継ぎが聞こえてくる。どこから? それは背番号8から。
 中町の背番号を引き継ぎ、3人の主将制で時折回ってくる中澤のキャプテンマークを巻く、アンカーの喜田拓也から――。
 失点の前触れを予測して、消し去る。
 スペースを埋め、相手ボールを略奪し、センターバックと連係しながらエースストライカーにニラみを利かせる。5日の浦和レッズ戦では虎視眈々とゴールを狙う興梠慎三に決定的な仕事をさせなかった。
 ただ、今の喜田なら海千山千の点取り屋を封じても別に驚きはしない。


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掲載元:Jリーグ - Number Web
URL:https://number.bunshun.jp/articles/-/838979