上位争いとは無縁のまま、秋を迎えた横浜F・マリノス。だがこのチームには、気になる男がいる。ポルトガルからやって来たストライカー、ウーゴ・ヴィエイラだ。
 外見に際立った特徴はない。
 屈強な肉体があるわけでもなく、スピードに恵まれているわけでもない。華麗なボールタッチを見せるわけでもない。
 だが、点は取る。ペナルティエリアの死角に身を潜め、チャンスになると不意に現われてボールを押し込む。ゴールの多くはワンタッチシュートから生まれている。
 横浜のGKコーチ、松永成立は、キーパー目線から見たウーゴの怖さを次のように解説する。
「彼がゴールを決められるのは、ゴールへの意識が強いから。そして技術があるというよりも、とにかく冷静なんです。キーパーから見ると、緊迫した場面でも落ち着きが見える選手は、ほんとうにいやなものなんですよ」
ラモン・ディアスとウーゴの共通点。 現役時代、多くの名手と対峙した松永は、そういって厄介なストライカーの代表に、かつての僚友ラモン・ディアスを挙げた。栄えあるJリーグ初代得点王である。
「チームの練習でディアスのシュートで鍛えられていたので、代表に行っても不安なくプレーできました。あれだけのストライカーはそうそういないですからね。ディアスの怖いところは、振りがとにかく速いこと。
 振りが速いので、コースがわかってもタイミングが読みづらい。すぐにずらされてしまいますから。キーパーはタイミングをずらされるのが、いちばんいやなんですよ」
 実はウーゴも、このタイミングをずらす術に長けている。
 松永が続ける。
「彼は駆け引きが上手く、いいポジションを取ってワンタッチシュートを決める。ワンタッチというのは、キーパーとしてはタイミングが取りづらいんですよ」


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掲載元:Jリーグ - Number Web
URL:https://number.bunshun.jp/articles/-/832066