ノーゴールのまま迎えたアジアU-16選手権準々決勝。悔しい結果には違いない。ただ、FW西川潤(桐光学園高)の心は不思議と定まっていた。「方向性を示してもらえたので」と照れ笑いを浮かべた男は、チームへの献身を示し続けて先制オウンゴールを誘発し、決勝アシストを記録。世界切符を掴み取る原動力となった。
 
 話はグループリーグ第3戦にさかのぼる。ハーフタイムで、西川の頭上には激しい雷雲が発生していた。その源はもちろん、森山佳郎監督だ。自らのゴール欲しさに焦りが先行し、チームプレーをおろそかにしていたエースに対し、「このままのプレーを続けるなら後半10分で交代する」と厳しく諭した。
 
「FWの選手は『必ず自分がゴールを決めてやる』という覚悟をもってピッチに立たないといけない。でもチームにとっては誰が決めても同じ1点。西川のアシストで誰かが点を取ったり、彼の動きから点が生まれたりしても、同じなんです。もし、チームのための仕事をできないというなら、違う選手を出すだけと厳しく伝えました」(森山監督)
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 西川の持つストライカー魂は尊重しつつも、守備を免除するようなつもりはないし、奪われたボールを追い掛けない姿勢も厳しく問い詰めた。ゴールという形に繋がらなかったのでインパクトは残っていないかもしれないが、後半に入っての西川の動きは見違えるようで、守備もサボらずやり切り、もちろん10分で交代させられることもなかった。
 
 この流れは準々決勝に向けた重要な伏線となった。その前日、西川の表情は晴れやかだった。
 
「(監督に怒られて)方向性を与えてもらえた。自分が決めなきゃダメだと思い過ぎていた。そのことに気付かせてもらえました。チームが勝つことがすべて。自分の中で整理ができました」(西川)
 
 もう一度、前を向いて戦いの場に立った。不思議なもので、「自分が決めなくたって勝てればいい」と割り切ることでプレーの余裕も出てくるもの。「今日はすごく身体が動きやすかった」という感覚は、フィジカル的なものも当然あるだろうが、メンタル的な要素も大きかったはずだ。
 

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掲載元:サッカーダイジェストWebの更新情報
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