サンフレッチェ広島の練習場、吉田サッカー公園の天然芝グラウンドには、全体練習が終わると「椅子」が持ち込まれる。
 よく見ると、普通の椅子ではない。車輪はついているが、背もたれ、ひじ置きはなく、座面は小さな長方形で、地面に対して斜めになっている。
 実はこの椅子、座るためのものではない。
 選手は椅子の上で腹ばいになると、両足で踏ん張って蹴り出し、椅子の車輪を転がして前に進む動作を繰り返す。つま先を外側に向け、足の裏全体をつけた状態から蹴り出しているので、見た目はジャンプしながら進むカエルのよう。ちょっとユーモラスだが、苦悶する選手の表情を見れば、かなりの負荷がかかっていることが分かる。
黄金期ミランの練習に受けた衝撃。 傍らには常に、池田誠剛フィジカルコーチの姿がある。市原(現千葉)や横浜M(横浜FM)、浦和、FC東京などのJクラブだけでなく、韓国のA代表や年代別代表のフィジカルコーチも務めた、日本の第一人者。今季、広島のフィジカルコーチに就任し、J1で首位を走るクラブのコンディショニングを支えている。
「座らない椅子」を使って、池田フィジカルコーチは選手のどこを鍛えているのか。その原点は、20年以上前に遡る。
 池田フィジカルコーチは1994年から95年にかけて、イタリア・セリエAのACミランを視察した。当時のミランはDFフランコ・バレージ、パオロ・マルディーニ、MFデヤン・サビチェビッチらを擁し、セリエA3連覇、UEFAチャンピオンズリーグでも3年連続で決勝に進出するなど、まさに黄金期。そんな名門クラブの練習を見て、目を奪われた光景があったという。


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掲載元:Jリーグ - Number Web
URL:https://number.bunshun.jp/articles/-/831907