先ごろ終了したアジア大会(ジャカルタ・パレンバン)で、パキスタンは4つの銅メダルを獲得した。うちひとつは空手の女子68キロ級で、イスラム教の宗教色が強いこの国で、女子スポーツも健全に成長していることを示している。
 とはいえその内実はどうであるのか。『フランス・フットボール』誌8月21日発売号でポリーヌ・オマンビイク記者がリポートするのは、いまだヴェールに包まれたパキスタンの女子サッカー事情である(ちなみにアジア大会には、男子チームは出場したが女子は不参加)。
 女子がサッカーをプレーする。そのためにサッカークラブを作る。何の変哲もないごく一般的な行為が、それだけで社会を変える原動力となる。女子がサッカーをすることで、伝統的な因習やものの考え方が変わり、社会が男女同権の方向へと進んでいく。オマンビイク記者が伝えるのは、そうしたスポーツの枠を超えたサッカーの力であり、サッカーを媒介とした社会変革の様子である。
監修:田村修一
彼女の武器は、爆弾じゃなくボール。 これまでパキスタンについてはきわめて曖昧なイメージしか抱けなかった。だがそれでも少しずつ国が開かれつつある。それもサッカーのおかげで。今やサッカーは、女性解放と男女同権の確立のための最大の武器となったのだった。
 サディア・シェイキこそがパイオニアだ。
 社会を変えるべく伝統と偏見に敢然と立ち向かう、行動する女性のひとりである。
 この15年というもの、彼女は様々な政治的圧力と反動政策で反時代的なイメージの強いパキスタンで、女性の権利拡大のために戦い続けてきた。
 彼女が最大の武器として利用したのがサッカーだった。
 サッカーこそは最も非暴力的な闘争手段であり、ボールという爆弾と戦場としてのピッチが、彼女が不平等や原理主義と戦うための武器であり舞台であった。

掲載元:海外サッカー - Number Web
URL:https://number.bunshun.jp/articles/-/831803