イングランドにおける8月最後の週末は、クリスマス前の最後の祝日を含んで3連休。ショッピング目当ての地方からの旅行者でも賑わうロンドンでは、「サマー・セール」が最後の盛り上がりを見せる。
 今年、バーゲンを狙う必要などない世界的富豪の中にも、連休まっただ中の26日、『サンデー・タイムズ』紙のスポーツ1面で目にした「チェルシー・セール」の文字に、購買意欲をそそられた者がいたのではないだろうか。
 2003年からロシア人富豪のロマン・アブラモビッチが所有するチェルシーが、買い手を募るために、アメリカ系の投資銀行『レイン・グループ』と手を組んだと報じられたのだ。
 売り手の希望額は、推定20億ポンド(約2900億円)超。「夏の大売り出し」とは言えない額である。売却が実現すれば、13年前にマンチェスター・ユナイテッドが買収された際の約1150億円を軽く上回り、世界最高額でのクラブ買収となる。
リバプールにも同等の買収話が。 しかし、世界で「最も観られているリーグ」として露出度抜群のプレミア勢は、投資対象としての商品価値もすこぶる高い。今回の報道は同紙による「2018年リッチリスト(国内長者番付)」で1位にランクされている英国人実業家が20億ポンドで出した買収オファーを、アブラモビッチが拒否していた事実にも改めて触れていた。時を前後して、リバプールもアブダビから同規模の買収話を持ちかけられていたことが公の知るところとなったばかりだ。
 リバプールは、強豪としての伝統でチェルシーをはるかに凌ぐ。昨季リーグでも、5位チェルシーの1つ上の順位でCL出場権を獲得した。だが、21世紀のステータスでは、チェルシーは勝るとも劣らない。
 リバプールは、過去18年間で通算5度目のCL優勝と計5回の国内カップ優勝を達成した。ただチェルシーは過去15年間でクラブ史上初のCL優勝と5回のプレミア優勝を含む「15」を数えるのだ。
 一昨季の収益に基づいた「マネーリーグ」(デロイト社編集)でも、チェルシーは約5億8000万円弱の差でリバプールよりも1つ上の世界8位につけている。クラブの収益力はスタンフォード・ブリッジの建て替えが実行されて収容人数が4万人強から6万人規模に拡大されれば、さらに高まる。加えて、在ロンドンという不変の魅力を備えているのが、チェルシーの実像なのである。

掲載元:海外サッカー - Number Web
URL:https://number.bunshun.jp/articles/-/831759