ローマ出身のアレッシオ・フィガッリは数学者である。
 今年の夏、数学界のノーベル賞といわれる「フィールズ賞」を受賞した。
 34歳の彼は2年前からスイスの名門チューリッヒ工科大学で教鞭をとっているが、高校時代に通ったスタディオ・オリンピコが恋しくてたまらない。世界的頭脳を持つ彼は、「ノーベル賞にサッカー部門があればトッティの受賞は間違いありません」と大真面目に熱弁するほど、根っからのロマニスタなのだ。
 夏の間、母国イタリア・メディアのインタビューに応える中で、“スクデットへの方程式”は存在しうるか、という質問があった。若き教授は、答えに窮した。
「それは実に難問です」
覇気のない所帯持ちチームか! セリエA開幕3節を終えてローマは1勝1分1敗、結果と内容からやや躓いた感がある。
 トリノでの初戦は終始相手に主導権を握られた。終了間際の89分、FWジェコが往年の名手ファンバステンを彷彿とさせるスーパーゴールを決め、1-0で何とか開幕白星スタートを得たものの、本拠地オリンピコにアタランタを迎えた2節も大苦戦となり、3-3のドローに持ち込むのがやっとだった。
 前半での3失点をリカバリーし、後半に追いついたのはいいが、守備陣の相互理解不足や集中力の欠如は3節目のミラン戦でも露呈した。強い雨の中、95分にFWクトローネの決勝弾を許して1-2とされ、早くも今季初黒星を喫した。
 2年目の指揮を執る指揮官ディフランチェスコの怒り具合は凄まじい。
 不甲斐ない守備陣に激高したアタランタ戦では、憤怒のあまりベンチ横の壁を殴って左手を骨折した。熱すぎる兄貴分監督は試合後、包帯を巻いた手とイタリア独特の比喩表現でチームを叱咤した。
「残り10分というところで、気を緩めてバランスを崩したのがどうにも腹が立った。あれではまるで(エネルギッシュな)独身貴族チームから一方的にやられる、覇気のない所帯持ちチームの試合だ!」

掲載元:海外サッカー - Number Web
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