週末が来るたび、いそいそとスタジアムに出かける私には、サッカー観戦にいつも期待しているものがある。それは「だまされたい」ということ。
 もちろんサッカーなので、いつも思い通りにはいかない。期待してスタジアムに行ったのに裏切られたと思うことはよくある。
 しかし、それでも試合に通い続けると、ご褒美なのか気持ちよくだましてもらえることがある。予想を超えるいいプレー、いいゲームに出会って、テンションが上がるのだ。
 先日、雷鳴がとどろく埼玉スタジアムで、久々に気持ちよくだまされた。
 悪天候のため、キックオフが30分順延された浦和レッズとセレッソ大阪の一戦、その主役となったのはアウェーチームのブラジル人ボランチ、ソウザである。
 ソウザは豪快なミドルシュートで、この試合の決勝点を決めた。
 1-1で迎えた53分、杉本、木本とつながったボールがペナルティエリア外にいるソウザのもとへ。ここでソウザは左にいる清武にパスを出す素振りをして、一気に右へボールを持ち出す。対面の青木とマウリシオを揺さぶって、右足一閃。ここしかない、という対角線上のネットを撃ち抜いた。
ブラジルでは「血管シュート」と呼ぶ。 試合後、ソウザは次のようにゴールを振り返った。
「キヨ(清武)に出すふりをして、自分の得意の右足に持っていって、シュートを打ちました。しっかりと足に当たったし、キーパーには厳しいコースだったと思います」
 ブラジルではボールの真芯を捉えた強烈なシュートを、「chute na veia」と表現する。
 直訳すると「血管シュート」。名医が一発で血管に注射針を刺すように、名手はボールの芯を捉えた強烈なシュートを放つ。浦和戦の決勝ゴールは、まさにそれだった。
 血管シュートの名手ソウザは、ワンステップで狙ったところに強いボールを蹴ることができる。今季序盤戦の柏レイソル戦でも豪快なミドルシュートを決め、それは2・3月の「Jリーグベストゴール」に選出された。

掲載元:Jリーグ - Number Web
URL:https://number.bunshun.jp/articles/-/831813