国際舞台でマークした3ゴールという結果は、上田綺世(うえだ あやせ/法政大)の心を満たすものではなかった。
 準優勝に輝いたアジア大会を終えたとき、上田に芽生えていたのは、たしかな自信ではなく、足りないものを身につけたいという強い欲求だった。
「力不足を感じましたね。それは優勝できなかったからとかじゃなくて、自分の中で欲が芽生えたというか。もっと速く動きたいとか、もっと強くなりたいとか、自分に物足りなさを感じました」
 鹿島学園高時代は10番を背負って高校選手権に出場し、法政大1年の昨年は関東大学リーグで12ゴールをマーク。今では“大学ナンバーワン・ストライカー”との呼び声も高いが、これまでは決して脚光を浴びる存在ではなかった。
 昨年12月、東京五輪代表の立ち上げとなったタイ遠征に招集されたが、代表と名の付くものに選ばれたのは、このときが初めて。「大学選抜はありますけど、国体のメンバーとかにも入ったことがない。(メンバーの)ほぼ全員と初対面」(上田)という状態だったのだ。
「大学生なので、プロに負けたくない」 だが、タイ遠征で2ゴールをマークして森保一監督の評価を勝ち取ると、負傷のために選考外だった1月のU-23アジア選手権を除き、3月のパラグアイ遠征、5月のトゥーロン国際大会、そして今大会とコンスタントに招集されてきた。
「ベンチスタートの自分が途中から出たときに何ができるか、何をしないといけないのか、考えながら試合を見ていた。グループリーグでは多くのシュートを打ったけど点を取れなかった。
 国を背負って戦う選手として、決めなきゃいけないし、結果には絶対にこだわらないといけない。自分は大学生なので、プロに負けたくないという気持ちがある。やっぱりこういった経験が大事で、絶対に何かを持ち帰ろうという強い気持ちで毎回臨んでいるので、この試合でまたひとつ成長できたと思う」
 上田がそう力強く語ったのは、今大会初ゴールを奪ったラウンド16のマレーシア戦後のことである。

掲載元:サッカー日本代表 - Number Web
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